懐かしの鷲ヶ峰 -52年ぶりの再訪-

 梅雨の晴れ間の貴重な一日をどう過ごすか。やはり気持ちの良いのは山歩きです。それでは、どこへ出かけたらよいか。ふと思いついたのは、そろそろニッコウキスゲのシーズンをむかえる霧ヶ峰です。霧ヶ峰はいくつもの峰からなる火山の総称ですが、今回はその北西端に位置する鷲ヶ峰(1798m)に登ることにしました。
 実は鷲ヶ峰は52年前に登ったことがあります。都立T高校を卒業し、そのころは「一浪=ヒトナミ」といわれた浪人生活に入った夏のことでした。クラスの大半が浪人しておりましたので、気晴らしに、いや運動不足解消のために、有志で山歩きに出かけようということになったわけです。
 下諏訪駅から和田峠を越える国鉄バスが運行されていたので、それを利用して和田峠から入山し、鷲ヶ峰に登り、八島ヶ原湿原の東側を経由して、上諏訪行の諏訪バスが発着していた強清水に至るというルートでした。今は和田峠を通るバスはなく、強清水発着のバスも土休日のみの運転ですので、当時と同じルートで山歩きをするのは大変です。この一帯の交通事情はビーナスラインという名の観光道路が建設されたことで大変貌を遂げたのですが、当時私たちが歩いたルートに近い、和田峠~八島ヶ原湿原付近~強清水間の道路が開通したのは2年後の1970(昭和45)年11月です。車が頻繁に行き交い、駐車場が大混雑をきたすような風景をみることなく、静かな山歩きを楽しめたのはラッキーだったかもしれません。
 さて今回はそのビーナスラインを利用して、「八島湿原駐車場」から鷲ヶ峰を往復し、その後、湿原を時計回りに一周するプランとしました。
 鷲ヶ峰がどんな山だったのか、何しろ52年前のことですから、鮮明に記憶しているとは言い難いのですが、ほとんど樹木のない草原状の尾根を歩いたという記憶とは一致していました。展望の良い山というのも昔のイメージ通りでした。全く記憶がなかったのが八島ヶ原湿原の鎌ヶ池です。その脇を通ったはずなのですが、湿原にはあまり興味がなかったのかもしれません。
 当時は植物にも関心が薄く、ニッコウキスゲ以外、花の名前などほとんど知らなかったといってよいでしょう。今回は、どこにどんな花が咲いているのか、珍しい高山植物はないか、それを探す楽しみが大きかったように思います。観光開発に伴う景観の変化もさることながら、自分自身の山や自然との向き合い方が、52年前とは大きく変化したことを感じた山歩きでした。


 初めて鷲ヶ峰に登ったころの霧ヶ峰付近の絵図です。『JNR(国鉄)ニュース』に掲載されていたものですが、和田峠へむかう国鉄バスが描かれています。
国鉄ニュース掲載の霧ヶ峰絵図.jpg
 ニッコウキスゲが咲き始めた現在の霧ヶ峰です。かつてはあたり一面ニッコウキスゲの原という感じでしたが、シカの食害により壊滅的な打撃を受けました。柵を設置するなどの対策を講じたことで、復活しつつあるということですが、まだその数は少ない印象です。
咲き始めたニッコウキスゲ.JPG 
 「八島湿原駐車場」に車を置いて、鷲ヶ峰への登山を開始しました。早速現れたのが、シカ除け柵のゲートです。鷲ヶ峰は前方の山を越えた先にあります。
シカ防護柵.JPG
 登山道脇や八島ヶ原湿原周辺でよくみかけたのがこのニシキウツギです。湿原入口の「八島湿原花ごよみ」という案内板でも紹介されていました。
ニシキウツギ (2).JPG
 近寄って見るとこんなに可愛い花でした。
ニシキウツギ.JPG
 尾根に出ると鷲ヶ峰の山頂部分(左端)が見えてきました。気持ちのよい山道です。
鷲が峰めざして.JPG
 振り返ると、湿原が一望できます。
八島が原湿原.JPG
 52年前に鷲ヶ峰から下った際の風景はこのようでした。眼下に広がる八島が原湿原の形は同じですが、全体に今よりも樹木が少ない印象です。
680721鷲が峰から八島湿原への下山路.jpg
 現在は八島湿原駐車場やビーナスラインの一部が視野に入ってきますが、昔はもちろんそのようなものはありません。
八島湿原駐車場.JPG
 ここを登りきれば鷲ヶ峰の頂上は間近です。
DSCF2902.JPG
 登山道の周辺ではいろいろな高山植物をみることができました。これはミヤマウツボグサです。
ウツボグサ.JPG
 こちらは、今咲き始めましたという感じのコウリンカです。
コウリンカ.JPG
 現在の鷲ヶ峰山頂です。昔はこんな立派な標識やベンチはなかったと思います。
現在の山頂.JPG
 52年前に山頂で撮影した写真です。当たり前ですが、みんな若いですね。されど、現在のハイティーンと比べると少し大人びているかも。
680721鷲が峰山頂にて.jpg
 記念写真を撮った場所はこの岩のあたりだと思われます。
山頂の岩.JPG
 山頂からの眺めは抜群で、諏訪湖も一望できます。
諏訪湖方面の眺め.JPG
 52年前も同じ眺めを楽しんだようです。
680721鷲が峰山腹から諏訪湖方面をみる.jpg
 山頂から和田峠側をみたところです。52年前はこちら側から登ってきました。
鷲ヶ峰山頂から和田峠方面をみる.JPG
 こんな写真が残っていました。背後にトンネルがみえますから、和田峠の登山道入口付近ではないでしょうか。
680721和田峠出発.jpg
 鷲ヶ峰から八島ヶ原湿原へと下るルートは今回も同様です。途中で、鎌ヶ池を見下ろすことができますが、このあたりの記憶はまったくありません。手前に写っているのはニシキウツギです。
ニシキウツギと鎌ヶ池.JPG
 八島が原湿原を一周する道は、こうした木道になっているところが多いのですが、その傍らにはコバイケイソウ(右)やレンゲツツジ、ヤマツツジなどが咲いていました。
遊歩道とコバイケイソウ.JPG
 鎌ヶ池付近の自然の造形のすばらしさには感動を覚えました。52年前もここを通っているはずなのに、記憶がないのが不思議です。
鎌ヶ池と八島ヶ原湿原.JPG
 レンゲツツジと小さな池塘のコラボも素敵です。
池塘とレンゲツツジ.JPG
 湿原のまわりにはアヤメやアカギキンポウゲ(黄色い花)が咲いていました。
アカギキンポウゲとアヤメ.JPG
 これはイブキトラノオでしょうか。
イブキトラノオ.JPG
 八島ヶ原湿原南側の遊歩道からみた鷲ヶ峰です。52年前にはここは通っていないので、この景観は新鮮でした。
八島が原湿原からみた鷲ヶ峰.JPG