同和鉱業花岡線花岡駅~忘れ難き終着駅(7)

第7回 同和鉱業花岡線花岡駅(秋田県)

 ポン太が十代のころの話です。家の近くに劇団幹部の女優さんが住んでおり、その方からチケットを入手した父が、これはなかなか良さそうだからと、私に観劇をすすめてくれたのです。それまで「新劇」というものを見たことが無かったので、良い機会と思い出かけてみました。会場は六本木の俳優座劇場、タイトルは「勲章の川」であったと思います。「花岡事件」を扱ったかなりシリアスな内容でした。
 「花岡事件」というのは、第二次大戦末期、秋田県花岡鉱山鹿島組出張所に強制連行されて来ていた中国人労働者たちが、虐待に耐えかねて暴動を起こし逃走した事件です。捕らえられた後の扱いは過酷で、拷問によるものを含め、400人以上が死亡したとされます。こんな事件があったことを初めて知り、劇団員たちのリアルな演技にも衝撃を受けました。捕らえられた中国人たちに、多くの住民が石を投げつける中で、茹でたジャガイモをそっと渡した女性がいたという話もあったように思います。どんな状況下でも「良心」や「慈愛」を失わない人がいることに、救われた思いがしたように記憶しているのですが、そんな話だったような気がするという程度の記憶にすぎません。画像
 それから10年以上経ってから、鉄道乗車を目的に花岡を訪れる機会がありました。雪の降りしきる花岡駅に着いた時に、ふと思い出したのが上記の劇のことです。事件が起きたのは夏ですから、目の前の風景とはまったく異なっているはずです。それなのに、なぜかこの重く湿った春の雪と事件とが、自分の中では融合してしまい、切ない気持ちになりました。そんな意味で忘れ難い終着駅、それが花岡なのです。
 花岡線は大館~花岡間4.8km、全線単線非電化の路線でした。花岡鉱山の専用鉄道として開通した後、譲渡された小坂鉄道(後の同和鉱業小坂鉄道)の手により1916(大正5)年1月26日に開業。当初はいわゆる軽便サイズの762mm軌間でしたが、1951年に国鉄線と同じ1067mmに改軌しています。1985(昭和60)年4月1日に廃止となりました。

 雪の降りしきる花岡駅とその構内です。(1978年3月30日撮影、以下3枚同様)
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 花岡駅は、大鉱山を有する駅だけあって、このような立派な駅舎でした。
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 花岡線の始発駅だった大館です。これは小坂線のホームで、左側が花岡線のホームでした。ちなみに小坂線の方は1994年まで旅客営業が行われていました。
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 5年ほど前、久しぶりに大館を訪れました。大館といえば秋田犬の故郷。可愛い銅像がむかえてくれました。(2013年7月4日撮影、以下同様)
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 同和鉱業の大館駅跡と思われるところに行ってみると、こんな看板が目に入りました。しかし、かつての旅客駅の面影や痕跡をみつけることはできませんでした。
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 小坂線の方は、旅客営業を廃止した後も、2009年に全線廃止となるまで貨物輸送を続けていましたので、広い大館駅構内には、まだたくさんのレールが残されていました。
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 駅跡から少し歩いてみましたが、小坂線のレールは撤去されずに、ずっと続いていました。左側に線路1本分のスペースがありますが、それが花岡線の廃線跡と思われます。
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